2021.11.02
コラム
「坂道で息が苦しくなるのは大動脈狭窄症という心臓の病気のせいです」
「今後、大学病院での精密検査をお勧めします」
息切れについて当院を受診された方の中に、この大動脈弁狭窄症という病気が判明することがあります。
大動脈弁狭窄症はご高齢の方に多い病気です。
突然の説明にうろたえる方も少なくありません。外来でのご説明を補足するつもりでこのコラムを書いています。
大動脈弁は心臓から全身に血液を送り出す位置にあり、大動脈から心臓に血液が逆流しないように一方向弁の役割を担っています。動脈硬化などで弁の性質が固くなり、全身に送られるべき血液が十分通過できないほど弁の面積が狭くなってしまった状態が「大動脈弁狭窄症」です。
大動脈弁狭窄症になると徐々に心臓から十分な血液を送り出すことができなくなり、心臓への負担がかかっていきます。
軽症のうちはほとんど症状なく過ごしていますが、時間とともに進行し、息切れ、胸痛、失神などの症状が出現するようになります。
大動脈弁狭窄症の進行により心臓を動かす筋肉(心筋)の障害も引き起こし、さらに心臓への負担が増していきます。大動脈弁狭窄症は自然に治ることはありません。心筋の障害が進行しすぎて治療の手立てがなくなってしまう前に、適切なタイミングで診断・治療が行われることがとても大切です。
大動脈弁狭窄症と判明したら心臓超音波検査(心エコー)や血液検査などで定期的に重症度を把握して経過をみていきます。
症状が出てきてある程度進行した大動脈弁狭窄症は一般的に手術がすすめられますが、近年は医学の進歩により体への負担が少ない経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI:タビ)という治療の選択肢も増えました。
大学病院などでは内科医・外科医・その他専門職からなる弁膜症専門チームが、お一人お一人の年齢・もともとのご病気・生活様式なども勘案して、治療の選択を検討しています。 ご高齢の方に多いご病気ですが、必要な場合にはあきらめずに病気と治療法を知り対応策を検討することをおすすめします。
当院では慶応義塾大学病院などの専門病院をご紹介しています。ご自身の価値観やご希望を専門病院に伝えていくことも、合わせてサポートさせていただきたいと考えています。